小さな家の地下室から小さな声で呟いてみる

皆さんコンニチハ、年の瀬ですね。
少々ご挨拶が遅くなりましたが、盛況の内に終了した期間限定ショップ・揺卵洋品店第三話にお越し下さいました皆様&拙著お買い上げの皆様、ありがとうございました。今回も無事、乙女の夢が詰まったお店に陰鬱な悪夢のような作品を展示させて頂きました。お誘い頂いたメンバーの皆様には心からお詫び、もとい、お礼申し上げます。

さて、2015年。
いやー、大変でした、ホントに本当〜に大変な一年。
公私に渡る二つの大きな出来事があり、そしてこれらを乗り切るための日々でした。

一つは、言わずもがな暗黒ビジュアル童話『羊歯小路奇譚』(黒木こずゑ・絵 アトリエサード刊)が四月に刊行され、同時に出版記念展を銀座の幻想系老舗画廊・スパンアートギャラリーさんで開催したことです。
本書は、2012年のトーキングヘッズ叢書(TH)no.50から連載していた十の物語に書き下ろし一作を加えた内容になっています。連載していたものをまとめて書き下ろしは一話だけだから割と楽だと思うでしょ?(実際、私もそう思っていました) ところがどっこい、それはそれは終わりの見えない作業だったのです。読者の方ならご存じだと思いますが、私は紙面構成&本全体をデザインすることまでを自分の表現としています。連載時と書籍では版(本の大きさね)が違うので、当然レイアウトも変更します。連載時の雰囲気を残しつつ、より楽しめる視覚効果を考えねばなりません。しかも今回は写真も掲載しているので、これまた当然撮り下ろしも有り(黒色すみれのさち嬢のアレとかね)、画家の黒木こずゑ氏にも多数の挿絵(打合せの度にドンドン増えた)を描いて頂きつつ、下絵を見せてもらう度にまたレイアウトを変え、ページ数も膨れ上がりました。もちろん産みの苦しみはありますが、自分が目指す完成型に向かっていく作業は本当に面白く楽しいものでした。ですが、何しろ時間がない。気持ちが焦ると迷いが生じ、堂々巡りの迷路に入り込みます。割とゆったりスケジュールを取ったはずなのに、〆切りを一日延ばし、二日延ばし、ギリギリなところで入稿してもらいました。なぜ、そんなに時間がなかったのか。
それが大きな出来事二つめに関係します。




実は、昨年くらいから高齢の父親の体調があまり良くなかったのです。介護認定を受けていながらも、頑として独り暮らしを続けていました(母はすでに永眠しています)。私の住まいから父の家まで、最短で1時間半くらい。ケアマネージャーやヘルパーさんなど介護スタッフと日に何度も電話でやり取りしながら、24時間年中無休で駆けつける体勢で何とか父の暮らしをサポートしていました。今年のお正月もね、恒例の成田山に初詣に行ったんですよ。でもその数日後に倒れてしまった。二月上旬には緊急手術をし、一命を取り留めたものの医師に意識は戻らないだろうと言われました。ところが持ち前の生命力の強さからかなり回復し、会話はできないもののこちらの言うことは理解出来ている様子でした。その後何度か危機的状況や転院を繰り返し、徐々に弱っていき、九月のお彼岸に母の元に旅立ちました。
それにしても、人が一人死ぬとこんなに大変なものなのかと思い知らされました。しかも今回は、初めての喪主。感傷に耽っているヒマもなく、準備〜通夜告別式を執り行い、その後も各種手続きに忙殺されました。実際まだ残務処理は続いていて、年明け早々にもやらなければならない期日のものも迫っています。よく結婚よりも離婚が大変と聞きますが、それと似た感じでしょうか。慌ただしく過ごしているせいか、三ヶ月近く過ぎた今もあまり実感はなく、いまだ入院しているような気もするし、いつものあの家で転びながら独り暮らししているようにも思います。

さてここでもう一度、羊歯小路奇譚です。
父が倒れた今年の一月は、まさに作業の追い込み時期でした。おまけに例年もう一つ別の仕事でもこの時期時間を取られる作業があり、この二つの仕事だけなら乗り切れると予定を組んだのが大間違いでした。それでも何とか血反吐を吐く思いで予定通り出版にこぎつけましたが、気がつけば出版記念展の準備が何もできていません。おまけにその時期、転院問題が勃発。昨今病院は機能別になっているので、長期療養になる場合は一般病棟にはいられないのです。で、療養病棟がある病院の下見に行ったり病院側と面談したりと煩雑な手続きが。。中略。。それでも何とか展示作品も揃え、記念イベントまでこなせたのはミラクルです。そうそう、羊歯小路奇譚の中にも何人か老人が登場しますが、父との日々が少なからず影響しているように思います。

私は元々父親とは折り合いが悪く、母が先に亡くならなければ頻繁にやり取りすることはなかったように思います。父は遅い結婚だったので、自分の同年代の親に比べると十歳以上年上。明治の親に育てられた戦争体験者なので(満州の部隊で暗号解読をしていた)考え方も古く、強烈な内弁慶で短気でせっかち、ちょっとしたことですぐに機嫌を損ねる面倒臭い人でした。長所と言えるのは、無類の酒好きなところくらいです。そんな父が晩年、私が駆けつける度に「悪いな」と照れ臭そうに言うのが嫌でたまりませんでした。「俺はお前がいるからいいけど、(子供のいない)お前が年取ったらどうすんだ」とか、ホント余計なお世話です。でもまあ最後の最後まで学ぶことは多かったです。老いというのは、赤ちゃんが色んなことをどんどん出来るようになっていくのと正に真逆。日々刻々と、一定の時期からは加速度的に出来なくなることが増え、それは生物としての活動を停止する準備をしていくことなのだということが良くわかりました。一つだけ悔いが残るとしたら、もう一度大好きなお酒と鮪の刺身を食べさせてあげたかった。それでも少なからずやりきった感はあるので、このくらいで勘弁して下さい。

図らずも2015年は自分の人生の中でもとても印象深い一年となりました。そんなこんなで今年は特に仕事をセーブしていましたが、THでは前年に引き続きDollhouse Noah氏とのコラボ連載だけは落とさず続けさせて頂きました。毎回送られてくるNoah氏の美少女写真は本当に眼福でときめきます。展示関係では揺卵洋品店のゲスト参加だけになっちゃいました。さあ、来年2016年はどうしましょう。ガンガン仕事してもいいけど、少し自分の時間をゆったり取りたいような気もします。取りあえず一月末発売のTHは、、その話はまた別の機会に。
 

今一度、羊歯小路奇譚や私の創作に関わった全ての方々と、亡き両親に、心よりの感謝を。

新年のご挨拶はできませんが、皆様良いお年をお迎え下さい。
来年もどうぞ宜しくお願い申し上げます。


最合のぼる拝




  



















 



 

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