何かと言うと、握手をする叔父さんだった。
酔うとそれこそ、何度も何度も「握手」と言って手を差し出す。
子供の頃はそんな握手が、気恥ずかしいような、少し怖いような感じがした。
最期の握手はつい半月前。
随分とほっそりした手で「兄貴を頼む」と言っていた。
冬晴れの朝、握手の叔父さんは旅立った。 moai
(少し補足すると、握手の叔父さんが言うところの“兄貴”とは、私の父親の事だ。長男である私の父は、早くに他界した自分の父親代わりをしていたから、妹弟たちにとって親みたいなものなのだ。きっと叔父さんは親を残して先に逝く子の心境だったのだろう)